富田由美
幼稚園教諭から看護師の道へ
子どもが大好きな私は、夢だった幼稚園の先生として社会人の第一歩をスタートさせました。
そして園児の病気、入院を経験。子どもたちのために、もっとできることはないのかと考えたとき、小児医療に関心を持つようになり、看護師を目指したいと思うようになったのです。
当院のことは、友人が非常勤をしていたことから、とても働きやすい職場だということを聞いていました。それで、看護学校の在学中から、看護助手のアルバイトをさせてもらいました。
別の病院で実習もしましたが、患者さんとより密接に関わることができる当院の看護に魅力を感じ、学校を出てから当院へ就職。 現在は、内科から異動して障害者病棟(3南病棟)に勤務。プリセプターとして後輩の指導にあたるなど、責任のある立場も任せてもらえるようになりました。
以前に担当したプリセプティは、ほかの病院で1年の経験があり、基本的な 看護技術は備わっているものの、不安やとまどいがあるように感じました。そこで、勤務が違う日もコミュニケーションが取れるように交換日記を用意。仕事で の疑問点や不安点を綴ってもらおうと考えたのです。きっと慣れないことが多く、心細かったのでしょう。徐々に緊張の糸がほどけ、生き生きとした表情を見せ てくれるようになりました。その看護師は結婚を機に退職することになりましたが、最後に「富田さんがプリセプターだったので、がんばって続けることができ た」と言ってくれたので、ほっとするとともに、とてもうれしく思いました。
固定チームの導入できめ細やかな看護を提供
私たちの病棟では、患者さんの体調や症状をきめ細やかにケアしていくために、最近固定チームナーシングに変更し、私はチームリーダーを務めています。
月に一度はミーティングを開いて、チーム内で目標を設定。担当している患者さんすべての症状や、それに合わせたケアプランを記入したシートを作成して、チームのみんなで情報共有をしています。
固定チームでなかったころは継続的な看護をすることができず、看護師としてもはがゆさがありました。何よりも、「あの看護師さんはこう言っていたのに、今 日は別の看護師さんにこんな指導を受けた」と、患者さんの中に迷いが生まれているのではないかと、気がかりで…。「患者さんに混乱や不安を与えてしまって いるのでは」と心配でした。
しかし現在では、患者さんとお顔を合わせて話をする機会も増え、信頼関係の構築に力を注ぐことができるようになりました。今まで以上に、一人一人の患者さんにしっかりとかかわれるようになったので、日々の看護も充実。看護師として私自身も大きく成長できたと思います。
またこの体制はスタートして年数が浅く、当院でのリーダー像は確立の途上にあります。チームリーダーとして、果たすべき責任を学ぶために勉強会や講習に参加して、自分自身のスキルを磨いていくことが私の課題のひとつです 。
患者さんと家族を支える環境づくりに邁進
以前、食事にもサポートが必要で在宅療養に移行することは難しい状態の患者さんが退院を希望されました。
私たちはご本人の意思を尊重したいと考え、ご家族に指導を行いながら退院への道筋を作ろうとしたのですが、奥さまもご高齢であるうえ、ご両親の面倒を見て おられた娘さんも50代で負担は大きく、ときには心が折れて、感情的になられることも。そんなときは、チームのみんなで娘さんのお気持ちを受け止め、スト レスを吐き出してもらえるような環境を整えました。
そしてその方は無事、在宅療養に移行することができたのですが、退院後に娘さんから「不安もあったけれど、家で父と過ごす時間ができたことをうれしく思っ ています」と言っていただきました。このお言葉を聞いて、「患者さんの意思を尊重したいと思うこのチームがあったから患者さんとご家族を支えられた」と、 自分たちの看護の励みとさせていただくことができました。
新卒の看護師さんは技術の習得に必死になりますが、大切なのは目の前にいる生身の患者さんを深く知るということ。技術の向上はもちろん重要ですが、人とし て看護師として、患者さんとじっくりと向き合えるようになってほしいですね。また看護師は認知症など意思の疎通が難しい患者さんを子ども扱いしてしまうこ とがあります。そんなときは、今一度、初心に戻って相手の人格を尊重するという看護の基本を思い出せるように声を掛け合っていきたいと思います。